「ご多用のところ…」「ご多用の中…」など、結婚式やビジネスの場で使われることがある「ご多用(たよう)」という言葉。その意味を理解して正しく使えていますか?
用件に応じた使い方やシーン別の例文、便利な言い換え表現を紹介します。誤った使い方や「ご多忙」との使い分けも要チェックです。
「ご多用」の読み方と正しい意味は?
「ご多用」は「ごたよう」と読み、多忙を意味する「多用」の丁寧な表現です。用事が多いことや忙しいこと、特に目上の人が用事が多くて忙しくしていることを意味します。
「ご多用のところ…」と相手の忙しさを気遣ったうえで言葉を続ける、いわば会話のクッション言葉のような役割があります。
相手を気遣うクッション言葉として使う
「ご多用」は、相手が忙しいだろうと気遣いつつ感謝したり頼み事をしたりする際にクッション言葉として使います。
上司のような目上の立場の人や頼み事をする相手に使うほか、かしこまった場で使ってもOKです。よく使われるのは次のようなシーンです。
- セミナーや会議の開会の挨拶
- ビジネスメール・アンケート
- 結婚式の招待状
- 結婚式のウェルカムスピーチ
- 結婚式の親族代表挨拶
- お世話になっている人への年賀状
相手が忙しいのが事実でなくてもよく、「忙しいだろうと思うけれど」という気遣いの心を表現したいときに使う言葉です。
「ご多用」をスマートに使う言い回し
感謝を伝える言い回し
相手が何かしてくれたときに「ご多用」を使って感謝を伝える言い回しです。打ち合わせや集会に来てくれたこと、仕事を引き受けてくれたことなど「忙しい中時間を作って何かをしてくれてありがとう」という意味合いで使います。
- ご多用のところありがとうございます
- ご多用の中ありがとうございます
- 大変ご多用の中お時間を頂戴しありがとうございます
頼み事をする言い回し
相手に対して「ご多用」を用いて頼み事をする言い回しです。「忙しいと思うけれどお願いできるとありがたい」「忙しいとわかりつつ無理を言って申し訳ない」のような相手への気遣いを伝えることができます。
- ご多用中とは存じますが、・・・お願いいたします
- ご多用のところお手数をおかけしますがよろしくお願いいたします
- 大変ご多用の中恐縮ですが、・・・いただけますでしょうか
- ご多用のところ失礼いたします
「ご多用中のところ」は間違い!
「ご多用」の間違った言い回しに「ご多用中のところ」があります。「ご多用のところ」「ご多用中と存じますが」などが混同された表現ですが、「ところ」も「中」も「ご多用」である状況を指すため意味が重複しています。注意して使うようにしましょう。
シーン別「ご多用」を使った例文
セミナーや会議の開会の挨拶
セミナーや会議などの集会で、主催者側が来てくれた人に対する挨拶で使うことがあります。来てくれたことや時間を作ってくれたことに対して感謝を述べる表現を紹介します。
例文
本日はご多用の中「〇〇セミナー」にお集まりいただきありがとうございます。
本日はご多用のところ貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。
ビジネスメール・アンケート
ビジネスの相手や顧客に何かをお願いしたいとき、また返事の催促のような少し言いにくいことを伝えるときにもクッション言葉として「ご多用」を使います。「忙しいとは思うけどどうかお願いします」とやわらかく頼み事を伝えることができます。
例文
ご多用中かと存じますが、資料へのお目通しよろしくお願いいたします。
ご多用のところ恐れ入りますが、本日中にお返事をいただけますと幸いです。
結婚式の招待状
「ご多用」は結婚式のようなおめでたい場で使っても問題ありません。招待状では返事をもらいたい旨や出席してほしい気持ちを伝える文章で使います。
例文
ご多用のところ恐縮ですが、〇日までにご返信いただけますと幸いです。 ご多用かと存じますが、ご出席賜りますようお願い申し上げます。
結婚式のウェルカムスピーチ
結婚式の当日に来てくれたゲストに対して感謝の気持ちを伝えるウェルカムスピーチでも使います。「わざわざ来てくれてありがとう」の気持ちを丁寧な言葉で伝えることができますよ。
例文
本日はご多用の中、私たちのために結婚披露宴にご足労くださり誠にありがとうございます。 本日はご多用のところ、私たちふたりのためにご列席くださり誠にありがとうございます。
結婚式の親族代表挨拶
結婚式では新郎新婦の親族もゲストを迎えるホスト側になります。親族からゲストに対して出席への感謝を伝える挨拶やスピーチで使ってもいいですね。
例文
本日はご多用にもかかわらず〇〇と〇〇さんの結婚披露宴にご出席いただき、心より感謝申し上げます。 本日はご多用の中、また遠方より二人の結婚式にお越しくださり誠にありがとうございます。
お世話になっている人への年賀状
上司やお世話になっている人への年賀状で相手を気遣う表現でも使います。「年の瀬で忙しいとは思うけれど、身体に気をつけて」という相手を気遣うやさしい表現です。
例文
大変ご多用とは存じますが、くれぐれもご自愛ください。
ご多用中かと思いますが、お身体にお気をつけてお過ごしください。
「ご多忙」との意味の違いは?
「ご多用」とよく似た言葉に「ご多忙(ごたぼう)」があります。「ご多忙」も忙しいことや用事が多いことを表し、使われるシーンもほとんど同じです。
ただ「ご多忙」には「亡」の字が含まれていて、お祝いの場では避けるべき「忌み言葉」に当たります。結婚式のようなおめでたい場ではほかの言い回しを使う、漢字で表記せず平仮名にするなどの配慮が必要です。
「ご多用」の類語を使った言い換え表現
「ご多用」と似た意味を持つ類語を紹介します。相手や場に応じて使い分けてみてください。
ご多忙
「ご多用」と同じように「ご多忙のところ」「ご多忙の中」のようにクッション言葉として使います。忌み言葉の側面があるので、結婚式や出産祝いの手紙のようなお祝い事での使用は避けるようにしましょう。
例文
ご多忙のところ恐れ入りますが、本件ご検討いただけますと幸いです。
ご多忙の中恐縮ですが、〇日までにご確認いただけますでしょうか。
お忙しい
「お忙しいところ」「お忙しい中」と表現することもできます。聞こえがやわらかいため、口頭で意味が伝わりやすい表現といえるでしょう。「ご多用」と同じく目上の人に使ってもOKです。
例文
お忙しいところご足労いただきありがとうございます。
お忙しい中お時間を頂戴しありがとうございました。
相手を気遣うように一言添えられるとお互いに気持ちよくコミュニケーションができますね。ビジネスや結婚式で、シーンに応じて上手に使ってみてください。
※ 2021年11月 時点の情報を元に構成しています
「披露宴演出」 の 雑学 に含まれています