婚約とは?どこから婚約になるの?など、そもそもの婚約の定義、婚約するメリット、婚約したらやること、万が一の婚約破棄や婚約解消に備えて知っておきたい法的根拠などを、弁護士の熊谷祐紀先生監修のもと、まとめました。
婚約の定義とは
婚約とは「相手と将来結婚することを約束すること」を指します。
婚約者とは、「将来結婚することを約束した」相手のことで、その相手との関係を対外的に示す時に使います。
ただ、婚約には、法律上の規定や手続きがなく、形式の決まりごともありません。法的な規定はありませんが、これまでの判例の積み重ねにより、裁判所で婚約していると認められるケースはわかってきています。
婚約は将来の結婚についての契約であり、正当な理由なく片方の事情で結婚に至らなかった場合「婚約の不履行」として損害賠償を行ったり、慰謝料を支払わねばならなかったりする場合があります。
婚約はいつから成立する?
婚約は、男女の口約束によって成立します。
しかし、成立することと裁判で「婚約状態にある」と認められることとは別であり、裁判になったときに認められるためには、2人の婚約関係を第三者に「証明できるもの」が必要です。
具体的には、
- 結納を行い、その時の写真がある
- 結納品の予約、結納を行う料亭などの予約を行い、またそれを実行している
- 婚約者として周囲の複数の人間に紹介している
- 結婚式場に2人もしくはご両親と出向き、そこで予約をしている。
- 婚約証明書にサインがある
などがありますが、これらのうちどれか1つで確実に認められるというより、これらが複数あるほうが認められやすくなります。
婚約指輪については、指輪という"アイテム"だけでは誰が購入した、贈ったということが証明しにくいため、指輪を贈られた際の写真がある、婚約指輪を2人一緒に購入しに行きお店で記念撮影をした写真と日付やサインの入った予約票があるなど、アイテム以外に「誰からいつ贈られた」ということがわかるものがあると証明しやすいと言えるでしょう。
婚約期間とは
婚約期間とは婚約後、婚姻届が受理されるまでをさします。おおむね半年から1年程度の婚約期間があることが多いようです。
結婚にあたって多くのカップルは、結婚式や披露宴、またはそれに代わる食事会を行ったり、結婚指輪を用意したり、新居を探したり、新婚旅行に行くために仕事を休んだりと準備することも多く、周囲への案内なども必要なため、婚姻届の提出までにはある程度の期間を設けているようです。
また記念日に婚姻届を提出したい、よいお日柄の日を選びたいというカップルやご両家の考え方も影響するでしょう。
婚約するメリット
形式としての「婚約」にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
結婚への気持ちを引き締める
婚約という形態を取ることで、結婚への道のりを2人で共有することができます。
周りに結婚の意思を表明する
家族や親戚に対して、結婚の意思表示になります。普段会うことが難しい親戚には、朗報となるのもメリットですね。
婚約の方法とは
「結婚」とは違って、法的に「婚約」の形式は定められていないのですが、一般的には以下の3つが代表的なようです。
いずれの場合も婚約指輪を用意するカップルが多いようです。指輪をはじめとして、品物にこだわる必要はありませんが、気持ちを物に託すことでいよいよ結婚する覚悟が固まります。
口約束
プロポーズがこの代表例です。
しかし、お酒を飲んで意識が平常ではない状態や、性行為に伴ういわゆる「ピロートーク」では、裁判では「婚約」とは認められないことが多いようです。
また、口約束だけだと、万が一にも揉めたときには約束を証明するのが難しいです。
結納
結納とは、男性と女性の婚約を両家の間で確認する日本の伝統的な儀式のことです。
本来は女性の実家(婿入りの場合は男性の実家)で行われるものですが、結納品の持参や飾り付けのルール、決まった進行などがあり、結納後に振舞う食事の準備など負担が多いため、現代では結納のノウハウをもつ料亭やホテルで、会場のサポートをうけつつ個室で行われることが多いようです。
結納の形式や方法は、地域や家によってかなりの違いがありますが、多くの場合、新しい「家と家」との結びつきという考え方から、儀式後、家同士が近しく交わるための祝宴を設けています。
結納の実施率は地域によって差がありますが、全国平均では2~3割程度であり、その場合も仲人を立てない「略式結納」が主流で、簡素化してきているといえるでしょう。結納の品目や内容は、迎え入れる側である「男性側の地域(婿入りの場合は女性側の地域)」に従います。
また、婿入りの場合は嫁入りに比べ結納金は3倍程度と高額になるのが慣例です。
結納は、2人の間での結婚の約束というよりも、家同士の結びつきを強く意識された婚約方法といえます。
両家顔合わせ
結納に変わる場として、現代最も多く選ばれているスタイルです。
結納のように決まったルールはなく、場所もレストランや料亭など様々ですが、重要な場なので個室を予約するほうがよいでしょう。
両家の親睦が大きな目的ですが、結婚にまつわる結婚式のスタイルや新居の場所などを両家で確認する場としても機能します。
婚約したら何をする?結婚までのやることリスト
プロポーズがありそれを了承すると、2人だけで色々なことを決めていきたくなります。
しかし、周囲から認められ祝福されるスムーズな結婚のためには、段取りと、両親の希望をヒアリングし、2人の希望との着地点を見つけて心から納得してもらうことが重要です。
順を追ってみていきましょう。
1.それぞれが自分の親に報告
2人の間で結婚への気持ちが固まったら、まず必要なのはそれぞれが自分の両親に報告をすることです。
女性の場合は自分の親にきちんと報告する人が多いのですが、男性の場合親に報告しないまま話を進行させ、"いつの間にか息子が女性宅へ挨拶に行っていた"と男性側の親にとって事後報告となってしまい、心からの祝福を得ることが難しくなるケースが多々あるようです。
これは2人が女性側の両親ばかりを優先し、男性側の両親が"自分たちがないがしろにされている"と感じて起こることです。
両家の情報格差があり、一方が知っていて一方が知らないというのは不満を招きやすいので物事を伝えるタイミングひとつとっても、注意が必要といえるでしょう。
結婚の意思が固まったら男女ともに、自分の親に「結婚したい人がいる」という報告をきちんとしておくことが大切です。また、両親の性格や2人の交際期間、2人の年齢によっては、いきなり結婚という言葉を出すよりもまず「交際相手」として紹介をするという順序を踏んだほうがスムーズな場合もあります。
報告をしたら、両親の予定をリサーチし、「彼(彼女)を紹介する日取り」を調整していきましょう。
2.両家の親に挨拶
いわゆる嫁入り(結婚後女性が姓を変える)の場合は、男性が女性宅に挨拶に行くのが先になります。その後、女性が男性宅へ挨拶に行きます。
手土産については一般的なものを参考にしながら、ご両親の好みもあるため彼(彼女)と相談して決めるとよいでしょう。
挨拶後、男女ともに自分の親に、結納の有無、両家顔合わせに対しての場所や内容の希望などをヒアリングしておきましょう。
3.婚約指輪の購入
婚約指輪は結納がある場合は、結納までに準備しておくことが多いようです。準備が間に合わない場合は目録を用意することもあります。
じつは、両家顔合わせが原因となり破談というケースも少なくありません。
そのため婚約指輪については、顔合わせが順調に進み、後日用意という順序のほうが安心かもしれませんし、ご両親にとっても「自分たちの了承を得て両家の気持ちがまとまってから」という順序は安心できるでしょう。
4.両家顔合わせ
男性宅、女性宅へのそれぞれの訪問が済んだら、ご両家の意向を汲んで両家顔合わせの日程や場所を決定していきます。
費用は折半にすることが多いようです。また、結納の有無は事前にヒアリングし根回ししておくのがスムーズですが、改めて両家顔合わせの場で確認されることもあります。
5.周りへの婚約の報告
両家顔合わせを無事に終えると結婚に向けて具体的に動いていくタイミングになります。
ご両家が結婚について合意したとみなすことができますので、周囲に報告をしていくことができます。
結婚の報告を受けた相手は「お祝いをしたい」という気持ちになるもの。
いつ結婚するのか、結婚式の有無、開催するなら時期、報告する相手を招待するしないなど、報告できる内容を整えてから伝えられるとよいでしょう。
6.結婚式の準備
5と並行して行うこともあります。
結婚式の場所(立地)、内容も2人の希望と、両家のご両親の希望をすり合わせうまく着地させていくとよいでしょう。
7.新居の準備
新居の準備も結婚までに必要です。
購入の場合は申し込みから、審査、決済など1か月程度かかるため、半年以上前から物件を探していったほうがよいでしょう。購入の場合は、賃貸よりも場所においてご両家の希望が強い場合が多いので、それも含めて準備をしていくことが重要です。
賃貸の場合は、入居希望日の2か月前から具体的に探し始めるとよいですが、その前にエリアを話し合っておくとよいでしょう。
8.結婚指輪の購入
結婚指輪はこだわりを持つカップルが多く、半年以上前から探し始めることも。申し込みから受け取りまで1~2か月かかることもあるため、余裕をもったスケジュールを組むと直前に慌てずにすみます。
日付を刻印する場合は、婚姻届の提出日とするか、結婚式の日とするかを決めておきましょう。
9.結納
現代では結納を行う家庭は随分減りましたが、地域により差が大きいものです。地域性やご両親の希望をヒアリングしておき、しこりが残らないようにしましょう。
また、結納を行う場合でも、両家顔合わせも行っているケースが多いようです。
10.婚姻届の提出
多くのカップルは婚姻届の提出は2人の記念日や覚えやすい日、お日柄のよい日を選んでいます。
結婚式を行う場合は婚姻届の提出を先に行うケースが多いようです。証人は2人必要なため、両家から1名ずつ記名してもらうのが一般的です。
11.結婚式
婚姻届提出後、3~6か月以内に挙式披露宴を迎えるカップルが多くなっています。
婚姻届の提出日が2人の希望や都合であるのに対し、挙式披露宴、またはそれに代わる両家や親族食事会は、来てくれるゲストの都合を優先し、気候や時間帯を考慮して決めていきます。
万が一、婚約破棄になったら…
婚約破棄と婚約解消の違い
「婚約破棄」は一方的に主張するものであり、「婚約解消」は男女の合意によって行われるという違いがあります。
婚約破棄の中には、正当な理由のあるものとないものにわかれ、正当な理由があるものとしては、相手が回復不能な病気であることや子どもを持てない生殖能力などの問題について隠していた、不貞行為(浮気)を行った、実際とかけ離れた収入があると伝えていた、モラルハラスメントなどが裁判で認められています。
このような正当な理由が認められる場合は、婚約を破棄をしても慰謝料を支払う必要はありません。
一方、正当な理由なき破棄は、過失割合、交際期間、年齢などが考慮され、裁判ではケースバイケースで慰謝料が判断されていきます。
損害賠償請求を行うには
婚約破棄によって、結婚準備にかかる財産的損害が生じた場合は、損害賠償請求の対象になります。
具体的には、結婚式の申込金、新居の申込金、新居用の家具・家電、指輪等の購入代金、新婚旅行代金の申込金などが考えられます。
これらを裁判で請求するには、お近くの弁護士に相談することが重要です。
*日本弁護士連合会
婚約と内縁の違いは
よく2人は「内縁」関係である、という表現をされる場合がありますが「婚約」と「内縁」では、意味が異なってきます。
婚姻届を提出してない状態という点では「婚約」と「内縁」は同じと言えますが、法律上の扱いは異なります。
「婚約とは?」
男女が共に生活を送っているかどうかに関わらず、将来に夫婦となる約束をしている状態をさします。
「内縁とは?」
男女が法律に定める婚姻の届出を市区町村役所に行ってはいないが、当事者の意識や生活実態において事実上夫婦同然の生活を送っている状態。
内縁関係にあると認められた場合、法的には夫婦に準じた扱いとなり、法の下で保護をうけられる権利もあります。一方で法的な夫婦と同じように、同居協力扶助義務、貞操義務など、義務も負うことになります。
内縁の夫婦の場合は、法定相続人にはならないのが法的な夫婦との大きな違いです。
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※ 2022年4月 時点の情報を元に構成しています
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